≪セットアップ室≫キャラクターセットアップに大切なこと
2015/8/6
みなさん、こんにちは。野澤です。
今回はセットアップ室の野澤として、キャラクターセットアップに対して思うことを書いてみようと思っています。
今回は細かい技術的な内容ではなく、コンセプト的な内容です。
キャラクターセットアップにおけるプライオリティ
みなさんは、リギングされたキャラクターを扱う時にどの様なプライオリティを意識するでしょうか?
・アニメーターにとっての扱いやすさ?
・操作の軽さ?
・見た目の自然さ?
・複雑なギミックの連動性?
・異なるツール間を跨ぐためのハンドリングしやすさ?
などなどいろんな観点で判断しなければいけないと思います。
自分はその中でも、見た目の自然さや美しさに一番気を遣う様に周りに伝えています。
レンダリングされるモデルの変形が不自然に見えてしまったら、
いくら仕組み的に高尚なセットアップになっていても全てが台無しとなってしまいます。
セットアップをする人は、とかく頭でっかちになりがちなところがありますが、
根本的な話をすると最終的な見た目が良ければ全て良しだと自分は思っています。
CGで描かれたキャラクターは、1コマずつ切り抜いてみるとパラパラ漫画の様なものですね。
フレーム単位で好きに形状を編集できるセットアップは、それだけ見た目を美しく出来ると思います。
とはいっても何でもかんでも自由に変形出来てしまうとカットごとでキャラクターの見た目にバラつきが出てしまいキャラ崩れに繋がる事もありますね。
こういう場合あらかじめ動かす事を想定した場所にコントローラを仕込んでおいてアニメーターに制御してもらう事もありますが、
やはりそれだけでは万能とは言えません。
↓個人的にすごく好きなリグ
SergiCaballer – Troglodita RIG from Sergi Caballer on Vimeo.
↓この人のリールはいろいろすごいです。
Rigging TD Reel 2015 from Webber Huang on Vimeo.
弊社では、この見た目をブラッシュアップしたり、めり込みを修正する作業を、ショットワークの中でキャラクターを選択し、編集したい部位にのみ
影響を与えるブレンドシェイプターゲットで編集するツールがあります。
上記の動画の様に、直したい箇所だけを選んで、なるべく直感的に見た目のブラッシュアップを行えるようにしています。
DCCツールの垣根を越えるセットアップ
今度はもう少し範囲の広い話をします。
CGを制作する上で、全て同じDCCツールを使っていれば悩まなくてもいいのですが、世の中には
たくさんのDCCツールが存在します。
Maya, 3dsmax, Softimage, Houdini, C4D, MotionBuilder, Blender….などなど。
それぞれに長所短所がありますが、表現力を手軽に上げるためには、複数のDCCツールを使って
それぞれのいいとこ取りをした方が効率が良いです。
しかし、それぞれのソフトの中で同じように動作するセットアップを用意するのは非常に難しいです。
単純なスキニングであれば、殆どのDCCツールがサポートしているfbxフォーマットを用いる事である程度解決出来ますが、
それだけではかなり妥協した表現になってしまいます。
これらの問題を解決するために、Alembicというジオメトリキャッシュの共通フォーマットが誕生し、
今日では様々なDCCツールがサポートしてくれるようになりました。
しかし、全てをポイントキャッシュとして扱う方法は確実ではありますが、膨大なデータ量との戦いを強いられます。
ソフトやレンダラーによってSubdivide(スムース化)の計算が変わってしまうと
見た目に差が生じてしまうために、あらかじめSubdivideかけたモデルをキャッシュしたりすると、
たった数十フレームのショットのポイントキャッシュが数十GBを超えてしまう事もざらです。
日本の環境ではサーバやPCのOSにWindowsを使っている会社が殆どで、ファイルのIOがプロジェクトのボトルネックになる事はよくあります。
また、ジオメトリキャッシュを使ってしまうと後で編集が容易に出来ないため融通が利かないという問題もあります。
そんな中で、自分が前から非常に注目しているのが、Fabric EngineのRigging FrameworkのKrakenです。
Kraken – Open Source Rigging Framework from Fabric Engine on Vimeo.
Fabric Engineについてはtaikomatsu大先生が紹介しているのでこちらも是非ご覧ください。
このKrakenの機能を使用したRigを組むとMayaと3dsmaxとHoudiniとSoftimageなどで同じRigを扱うことが出来ます。
ただ単に同じリグを扱えるというだけでなく、GPUを活用した非常に高いパフォーマンスを期待できてリグの高速化も見込める夢の様な話です。
しかし一番のボトルネックは、実現したいデフォームの表現は自分たちでコーディングしなければいけない事でしょうか。
標準で用意されているskinClusterやシンプルなデフォーマー以外は、自分たちで実装しなければいけません。
プロジェクトで使用するためには、相当な開発コストがかかってしまいます。
しかし、このKrakenはOpenSourceなので、世界中の開発者の方がどんどん新しい機能を実装していけば、プロジェクトで活用する事もそう遠くないかもしれません。
ちなみに、このFabric Engineは、有償のFrameworkですが、Fabric Fiftyというキャンペーンで1 studio 50シートまで無料で使うことが出来ます。
興味のある方は是非試してみてください。そして情報共有していきましょう。
モジュラーリギング
キャラクターセットアップをしていると、パーツ替え、衣装替え、IK/FK切り替え、
コントローラの変更などアニメーターやショットアーティストから様々な要求をされます。
しかし全ての要求を一つのファイルで網羅できるセットアップは、中身が複雑になりオペレーションも重たくなりがちです。
しかも多くの機能を兼ね備えたリグが完成するまでには非常に多くの時間がかかり、その間アニメーターがモーションを
チェックする事ができないと作業効率が著しく低下してしまいます。
この問題を解消するために、Modular Rigging System(モジュラーリギング)という物が提唱されました。
この仕組みは、一つ一つのリグをモジュールという細かい単位で区別し、
ベースとなる骨格に後から接続する形でリグを機能させます。
こうする事で必要な機能は後から追加する事も出来るし、不要であれば取り除く事も容易になります。
と言葉で説明すると簡単なように感じるかも知れませんが、接続先の名前が変わってしまうだけでリグが破綻してしまったり
思わぬトラブルを引き起こす可能性が高いため、事前に綿密な仕様を立てる必要があります。
Modular Rigging System – Overview from CreatureRigs on Vimeo.
例えば上記で紹介されているようなフリーのスクリプトを試用してリグを構築すると、
手作業で構築するよりもヒューマンエラーを防止する事が出来ますが
ツールでサポートしていない範囲をどうするかなど、やはり考えなければいけない事はたくさんあります。
少し古い情報ですがHaloシリーズの開発で有名なBungieスタジオのHPでは、
このModular Riggingの仕組みを詳しく解説したスライドとビデオをダウンロードする事が出来ます。
http://halo.bungie.net/inside/publications.aspx
リグモジュールを接続する先をノードの名前を参考にするのではなく、ノードの上流にmetaNode(情報を格納)を接続し、
必要な情報をそちらから取得するという方法でトラブルを回避しています。
これらを活用するには、リグを構築するためにスクリプトを書く必要が出てきますが、リギングにかかる工数を必要最小限に
抑えるためには無視できない部分だと思います。
と、この記事を書いている間にCEDEC2015の講演内容が発表されました。
http://cedec.cesa.or.jp/2015/session/VA/5052.html
スクウェアエニックスの佐々木さんがモジュラーリグについて発表されるみたいですね。
これはリガー必見の内容になりそうですね。
CEDECといえば、私も僭越ながらこちらで講演させて頂くことになりました。
http://cedec.cesa.or.jp/2015/session/VA/2667.html
私の方では、リグではなくプロジェクトマネジメントの効率化について今話題の「Shotgun」の活用方法を紹介させて頂く予定です。
興味のある方は是非会場まで足を運んで頂けると嬉しいです。
資料集め
これからリグの勉強をしていきたくても、どこから情報を集めて良いか分からないという人も多いと思います。
Google先生に”Rig tutorial”などで検索しても色々と情報が揃えられますが、弊社ではさらにPinterestというサービスを利用しています。
ご存知の方も多いかも知れませんが、Pinterestは資料探しにとても便利なウェブサービスです。自分で一つ一つ調べなくても誰かが調べた情報をPinしておく事や、あらかじめ登録してあった情報が自然と集まってきます。
カテゴリ毎にボードを作り整理をすることが出来てとても便利です。
まとめ
ちょっと長くなってきたので、今回はこの辺で〆ようと思います。
キャラクターセットアップは、たくさんのピースを巧みに組み合わせてキャラクターに命を吹き込む非常にやりがいのある仕事です。
ロジカルに物事を考える訓練にもなりますので、もし興味がある方は是非トライしてみてください。
弊社では、枠の中でがんじがらめに縛られた仕様のリギングを強要することはありません。
リギングアーティスト一人一人で考えたベストだと思う方法をみなで共有しあいながら日々様々な改善に取り組んでいます。
そうしてリグは日々進化していくものです。
そんなDFセットアップ室では、リギングアーティストを大募集中です。
一緒に魅力的な作品を作っていきましょう!
詳しくは、下記の募集要項をご覧ください。
https://www.dfx.co.jp/careers/designer/rigging-artist.html
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本記事内で公開している全ての手法・コードの有用性、安全性について、当方は一切の保証を与えるものではありません。
これらのコードを使用したことによって引き起こる直接的、間接的な損害に対し、当方は一切責任を負うものではありません。
自己責任でご使用ください。
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